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日本は妊婦さんに対する世間の目が少々厳しいような気がします。妊婦であることを主張することは権利の過剰な主張だとする風潮もあれば、生まれた子どもが何らかの障がいを持っていればそれは妊婦の責任だと言及したりします。生まれてくる子どもたちが未来の日本を担う大切な存在であるのと同じように、その子を産む妊婦さんも皆で守らなければならない大切な存在であるはずです。

妊婦さんや生まれてくる子どもを守るために、メディアができることは根拠に基づいた正しい情報を発信することです。この記事では、これまでにわかっている、妊婦さんが気をつけるべきことをまとめました。

 

 食生活について

 葉酸の重要性

葉酸が不足すると、赤ちゃんの脳神経系に影響がでることがわかっています。(具体的には、二分脊椎や無脳症です。)

妊娠に気づかないごく初期から葉酸は必要になるので、妊娠を考えている女性は妊娠中だけでなく、妊娠前から必要量の葉酸を摂取することが重要です。

厚生労働省は、1日400マイクログラムの葉酸摂取を推奨しています。葉酸は緑黄色野菜に多く含まれてはいますが、この目標量を達成することはなかなか難しいので、サプリメントの使用も推奨されています。

 

 魚について

妊娠中の魚の摂取は、良い面と注意すべき面があります。

良い面は、魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が赤ちゃんの発達によいということです。

注意すべき面は、一部の魚には水銀が多めに含まれているので、それらを食べ過ぎると赤ちゃんの発達に影響がでる可能性があるということです。

このことから、水銀の多い魚はさけつつ、DHAやEPAの含まれている魚はしっかり食べるということが重要です。

具体的に、含まれている水銀が多めの魚とは、マグロ類やキンメダイです。水銀量が少なめな魚は、アジ、サバ、サケ、イワシ、カツオなどです。

詳しくは、厚生労働省の資料を参照してください。

 

 生ものは避ける

妊婦さんは、リステリア症という感染症に罹りやすくなっています。(健康な成人の20倍罹りやすいと言われています。)

※リステリア症は、リステリア菌の感染で起きます。感染した妊婦さんは、インフルエンザの様な症状や、嘔吐、下痢などの症状がみられます。重症の場合、髄膜炎(脳や脊髄を循環している液体=髄液に感染すること)を起こすことがあります。リステリア菌は、加熱していない食品を通じて人に感染します。

食べ物を介してうつる感染症の中でとりわけリステリア症に注意が必要な理由は、妊婦さんがリステリア菌に感染することで、お腹の中の赤ちゃんが流産や早産になってしまったり、髄膜炎や脳炎になってしまう可能性があるからです。リステリア菌は環境中に広く分布しています。低温にも強く冷蔵庫でも増殖しますが、加熱で殺菌されます。

リステリアの感染を避けるために妊婦さんが気をつけるべきことは、

生ものは食べない。(特に、生肉、加熱されていないナチュラルチーズ、生ハム、スモークサーモン、肉や魚のパテなど)

・野菜はよく洗ってから食べる。

・食べる前によく加熱する。

・冷蔵庫を過信しない。(調理後に冷蔵保存したものでも、食べる前に一度加熱するようにしましょう。例:ホットドックのソーセージなど既に食べる準備ができているもの)

・生ものを扱ったあとの手、包丁、まな板をよく洗う。

 

 お酒は我慢

妊婦さんの飲酒によって赤ちゃんの発達が遅れ、脳神経系に影響がでることがわかっています。

「これ以下の飲酒量であれば胎児に影響がない」という安全量は確立されておらず、妊娠を予定し始めた時点で、禁酒することが望まれます。

※妊娠に気づかずに少量の飲酒をしたからといって過度に慌てる必要はありませんが、速やかな禁酒が望まれます。

 

 日常生活について

  猫の糞や土いじりに要注意

もう一つ妊婦さんが気をつけるべき感染症があります。トキソプラズマ症です。抗体を持っていない妊婦さんが妊娠中に罹ると、流産や赤ちゃんの奇形の原因となります。

※トキソプラズマ症は、トキソプラズマという寄生虫に感染することで起きます。感染した妊婦さんには、無症状〜インフルエンザのような症状、もしくは筋肉痛などがみられます。

トキソプラズマは、生の食肉や、(屋外で生活したことのある)猫の糞、それに汚染された土や砂に存在しています。このことから、注意点は、

・生肉は食べない。

土いじりや猫の糞の処理は妊娠中はなるべく他の人に変わってもらう。必要なときは手袋をつけ、終わった後はよく手を洗う。猫の糞は、必ず毎日掃除する。

・飼い猫がいる場合は、屋外には出さない。(外でトキソプラズマに感染してくる可能性があります。)また、餌として生肉は与えない。

 

 子どもとの接触にも要注意

こちらは、サイトメガロウイルス感染症の予防のために必要です。(カタカナの感染症が多くてすみません。)こちらも、抗体を持っていない妊婦さんが妊娠中に罹ると、赤ちゃんの奇形や難聴の原因となります。

※サイトメガロウイルスに感染した妊婦さん自体には、軽い風邪症状がみられる程度で、特に治療しなくても治ります。

こちらは、子どもの体液からの感染やパートナーとの性交渉からの感染が多いウイルスです。このことから、

乳幼児の尿や唾液、鼻汁に触ったら必ず手をよく洗う。(オムツ替えや鼻汁を拭ってあげる、唾液がついたおもちゃに触るなど日常的に接触の機会はあります。)

・ご飯を食べるとき、乳幼児が使ったスプーンを自分の口に入れない。

・性行為ではコンドームを使用する。

以上を気をつける必要があります。

 

 タバコの煙には近づかない

妊婦さんが喫煙することは、絶対にダメです。早産や低出生体重、流産、出生後の乳幼児突然死症候群のリスクになるといわれています。

受動喫煙(本人以外の人が吸ったタバコの煙を吸ってしまうこと)も同様のリスクになります。

もし、旦那さんが喫煙者であれば、特に妊娠中は禁煙の協力が必要です。

 

 妊娠前に風疹の予防接種を

こちらについては、先天性風疹症候群との関係で知っておくことが重要です。詳しくは、過去の記事『結婚とともに20-40代が風疹ワクチンを打つべき理由』を参照してください。

 

以上、たくさんの項目を挙げましたが、以上のことは世界共通で妊婦さんが気をつけるべきこととして知られています。

また、これらのことは妊婦さんだけではなく、旦那さんを始め社会全体が知識として持ち、配慮し合うことが重要です。そして医療者やメディアは、知らなかった人を責めるのではなく、皆さんに知ってもらうような努力をしなくてはなりません。

参考文献一覧 Photo by Tatiana Vdb

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